< Episode of AZUL > 作词 : MYTH & ROID 作曲 : MYTH & ROID これは遥か昔、遠い国の、小さな島の、ある街の物語── ある日、海岸に、ひとりの少年が打ち上げられた。 少年はどこから来たかも、自分がなにものかも覚えていなかった。 街の人々は、これを海の神の思し召しだと考え、ある老夫婦に少年を引き取らせた。 老夫婦は、遊び道具として、少年に絵筆を与えた。 少年は少しずつ、絵を描くことを覚えた。 少年が描いたのは、人。すべてを失った空虚な少年にとって、 街の人々の豊かな表情は、あまりにもまぶしかった。 心が躍ると、筆も踊った。少年の絵は街で評判になり、 人は彼を「神の手を持つ少年」と呼んだ。 数年の時が過ぎ、老夫婦は病に倒れた。 少年を残し、あっけなく亡くなった。 少年は、二人の姿形を残そうと、彫刻を作った。 それはまるで、生き写しのようだった。 人々は、その生々しさに恐怖を抱いた。 少年が老夫婦の魂を奪ったと騒ぎ立て、 彼を「死神の手を持つ少年」と呼び、街のはずれへ追いやった。 少年には人々がひどく醜く見えた。 怒りと悲しみの混じった、とても黒いものが胸に満ちた。 しかし少年は、再び彫刻を作り始めた。 今度は、自分を見て恐れおののく街の人々を作り始めた。 さらに時が経ち、子供たちが噂した。 やがて海が上昇し、街が沈むと。 大人たちは噂を耳にすると恐怖にかられ、それを真実かのように信じた。 噂は海の神に届き、明くる日、海が静かに上昇をはじめた。 人々は我先にと街を出ていった。 しかし、少年は、街に残ることにした。 少年の生涯は、街とともにあった。 空虚な心は、人々の感情と人生に焦がれ続けた。 最後まで街とともにいたい。 愛も悲しみも、すべてをくれたのはこの街なのだから。 海は、次第に街を飲み込んでいった。 少年は最後に、自らの彫刻を作った。 憂いを宿し微笑むその表情は、少年そのものだった。 沈む街を見届けると、少年はどこともなく歩き出した。 胸に残る、微かな熱を携えて。