[00:00.000] 作词 : MYTH & ROID [00:01.000] 作曲 : MYTH & ROID [00:02.901] これは遥か昔、遠い国の、小さな島の、ある街の物語── [00:13.888] [00:18.147] ある日、海岸に、ひとりの少年が打ち上げられた。 [00:23.944] 少年はどこから来たかも、自分がなにものかも覚えていなかった。 [00:31.371] 街の人々は、これを海の神の思し召しだと考え、ある老夫婦に少年を引き取らせた。 [00:42.008] 老夫婦は、遊び道具として、少年に絵筆を与えた。 [00:47.557] 少年は少しずつ、絵を描くことを覚えた。 [00:52.337] 少年が描いたのは、人。すべてを失った空虚な少年にとって、 [01:00.010] 街の人々の豊かな表情は、あまりにもまぶしかった。 [01:05.953] 心が躍ると、筆も踊った。少年の絵は街で評判になり、 [01:13.371] 人は彼を「神の手を持つ少年」と呼んだ。 [01:18.317] [01:21.534] 数年の時が過ぎ、老夫婦は病に倒れた。 [01:26.799] 少年を残し、あっけなく亡くなった。 [01:30.276] 少年は、二人の姿形を残そうと、彫刻を作った。 [01:35.017] それはまるで、生き写しのようだった。 [01:38.803] 人々は、その生々しさに恐怖を抱いた。 [01:43.895] 少年が老夫婦の魂を奪ったと騒ぎ立て、 [01:48.673] 彼を「死神の手を持つ少年」と呼び、街のはずれへ追いやった。 [01:55.237] 少年には人々がひどく醜く見えた。 [01:59.040] 怒りと悲しみの混じった、とても黒いものが胸に満ちた。 [02:03.779] しかし少年は、再び彫刻を作り始めた。 [02:07.993] 今度は、自分を見て恐れおののく街の人々を作り始めた。 [02:13.416] [02:16.002] さらに時が経ち、子供たちが噂した。 [02:19.601] やがて海が上昇し、街が沈むと。 [02:23.602] 大人たちは噂を耳にすると恐怖にかられ、それを真実かのように信じた。 [02:30.531] 噂は海の神に届き、明くる日、海が静かに上昇をはじめた。 [02:36.930] 人々は我先にと街を出ていった。 [02:39.953] しかし、少年は、街に残ることにした。 [02:44.207] 少年の生涯は、街とともにあった。 [02:47.774] 空虚な心は、人々の感情と人生に焦がれ続けた。 [02:52.789] 最後まで街とともにいたい。 [02:55.429] 愛も悲しみも、すべてをくれたのはこの街なのだから。 [03:00.067] 海は、次第に街を飲み込んでいった。 [03:03.286] 少年は最後に、自らの彫刻を作った。 [03:07.064] 憂いを宿し微笑むその表情は、少年そのものだった。 [03:12.195] 沈む街を見届けると、少年はどこともなく歩き出した。 [03:17.362] 胸に残る、微かな熱を携えて。